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古今和歌集を読む

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古今和歌集(こきんわかしゅう)から親しみやすい歌を読みます。やさしい解説付き。ちょっぴり優雅な言葉の時間をあなたに。
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#恋

思ふよりいかにせよとか秋風になびく浅茅(あさぢ)の色ことになる(読人しらず)

#読人しらず (よみひとしらず) #古今和歌集 725 #jtanka #短歌 #恋 あなたのことを思うより他にどうしろというのですか。秋風のままになびく浅茅の色が変わっていくように、あなたは飽きる気持ちのままに心変わりしてしまいます。 「いかにせよ」は「どのようにせよ」の意。 「浅茅」は丈の低い茅萱。「浅茅生」ならば雑草の生えているところ。「浅茅が宿」ならば雑草で荒れ果てた住まい。「浅茅が原」ならば雑草で荒れ果てた野原。 「秋」は「飽き」に掛けている。 「ことにな

どこへも行き着かない恋(古今和歌集を読む)

古今和歌集に、こんな歌があります。読人しらずの恋の歌です。 行く水に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり 現代語に翻訳するなら「流れていく水に数を書くよりもはかないこと。それは、私のことなど思っていないあの人を思うことだなあ」とでもなるでしょうか。 ここに出てくる「思わぬ人」というのは、私のことを思ってくれない「あの人」のこと。「あの人」は、私のことを好ましく感じてくれることはあるのだろうか、きっとない。「あの人」は、恋心を私に感じてくれることはあるのだろうか、

久方のあまつ空にも住まなくに人はよそにぞ思べらなる(元方)

#元方(もとかた) #古今和歌集 751 #jtanka #短歌 #恋 あの人は遠く離れた天空に住んでいるわけでもないのに、私のことを自分とまったく無関係な別世界にいると思っているみたい。 「久方の」は「天」「光」「月」「都」などにかかる枕詞。 「あまつ空(天つ空)」は。「天空」「天上界」で、地上から遠く離れた場所というニュアンス。 「天つ空」の「つ」は格助詞で「天の空」の意になる。 「天つ風(あまつかぜ)」ならば「天の風」のこと。 「天つ神(あまつかみ)」ならば「天

逢ふまでのかたみも我はなにせむに見ても心の慰まなくに(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 744 #jtanka #短歌 #恋 逢うときまで(これを見て気分をまぎらわせて)というあなたとの思い出の品なんて、私にとっていったい何になるでしょう。何にもなりませんよ。あーあ、こんなものを見ても心が慰められることはないんですからねえ。 「かたみ」は「思い出すためによすがとなるもの」「思い出の品物」「思い出させる記念のもの」の意味。 「なにせむに」は「なに+せ+む+に」。「なに」は代名詞。「せ」はサ変動詞「す」の未然形。「む」は推量の助動詞

花筐(はながたみ)めならぶ人のあまたあれば忘られぬらむ数ならぬ身は(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 754 #jtanka #短歌 #恋 「花筐」は「花籠」。編み目が細かく並んでいることから「めならぶ」の枕詞になっている。 「めならぶ」はバ行四段動詞「目並ぶ」の連体形。「見比べる」の意味。 「あまたあれば」は「あまた+あれ+ば」。「あまた」は副詞「数多(あまた)」で「たくさん・数多く」の意味。「あれ」はラ行変格活用「在り(あり)」〔ら・り・り・る・れ・れ〕の已然形「あれ」。「ば」は已然形に接続しているので確定条件を表す接続助詞。 「あまたあ

わがごとく我をおもはむ人も哉さてもや憂きと世を心見む(凡河内躬恒)

#凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) #古今和歌集 750 #jtanka #短歌 #恋 私が恋い慕うのと同じように私のことを恋い慕ってくれるような人がいればいいのになあ。そんな人がいても恋はやるせないものなのか、試してみたい。 「おもはむ人」の「む」は婉曲を表す助動詞「む」で、「私のことを恋い慕ってくれるような人」の意味。 「哉(がな)」は願望を表す終助詞で「……がほしいなあ」や「……があればなあ」の意味。 「さてもや憂き」の「さても」は「そうであっても」の意味の

みても又またも見まくの欲しければなるゝを人は厭ふべらなり(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 752 #jtanka #短歌 #恋 逢っても逢ってもまたさらに逢いたくなるので、逢うのがあたりまえになるのをあなたは避けているのでしょうね。 「見まくの欲しければ」は「見まく欲しければ」に同じ。「見まく欲し」は「見たい、逢いたい」の意味。 「なるる」はラ行下二段活用動詞「慣る・馴る」の連体形〔れ・れ・る・るる・るれ・れよ〕。「馴れ親しむ。なじむ」の意味。 「厭ふ」はハ行四段活用動詞「厭ふ」の終止形。「嫌って避ける」という意味。 「べらな

思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらむ夢としりせば覚めざらましを(小野小町)

#小野小町(おののこまち) #古今和歌集 552 #jtanka #短歌 #恋 あの人のことを思いつつ眠るので、あの人のことを夢に見てしまったのだろうか。あーあ、あれがもし夢だとわかっていたなら目を覚まさかったのになあ。 「寝ればや(ぬればや)」は「寝れ+ば+や」。「寝れ(ぬれ)」は下二段活用の動詞「寝(ぬ)」の已然形(ね・ね・ぬ・ぬる・ぬれ・ねよ)。「ば」は順接確定条件を表す接続助詞。「や」は疑問を表す係助詞(係り結びで「らむ」は連体形)。「寝ればや(ぬればや)」で「眠

かたみこそ今はあだなれこれなくは忘るる時もあらましものを(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 746 #jtanka #短歌 #恋 この思い出の品なんて、いまとなっては何の意味も無いもの、むしろ恨みの種ともいえるものです。この品がなければあの人のことを忘れる時もあるでしょうに。 「かたみ」は「思い出の品」。ここでは「遺品」ではなく「昔を思い出させる思い出の品」の意味。 「あだ」は「徒(あだ)」(実質がないもの、無駄なもの、はかないもの)と「仇(あた)」(恨みの種)の両方をかけている。 「こそ〜なれ」は係り結び。「なれ」は已然形。

わが恋は虚しき空に満ちぬらし思ひやれども行くかたもなし(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 488 #jtanka #短歌 #恋 私の恋は、虚空に満ちてしまったらしい。恋心をはるかに伝えようと思うけれど、その気持ちの行く先もないのですから。 「満ちぬらし」は「満ち+ぬ+らし」。「満ち」はタ行四段活用動詞「満つ」の連用形。「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形。「らし」は推量の助動詞「らし」の終止形。 完了の助動詞「ぬ」は自分の意志とは関係がなく何かが起きてしまったときに用います。それに対して完了の助動詞「つ」は自分の意志によって何かを起

色もなき心を人に染めしよりうつろはむとは思ほえなくに(紀貫之)

#紀貫之 (きのつらゆき) #古今和歌集 729 #jtanka #短歌 #恋 色などついていない私の心をあの人で染めたときから、私のこの気持ちが色がうつろうように変わっていくなんて思えません。 「染めし」は、「染め+し」。下二段活用の他動詞「染む」の連用形「染め」に、過去を表す助動詞「き」の連体形「し」。「染めし」は「染めた」の意味。過去を表す助動詞「き」は話し手が直接体験したことを表す。ここでは、自分が恋している相手で自分の心を染めたことを直接自分が体験したことを表す

恋し続けたなら必ず逢える(古今和歌集を読む)

たとえばこんな恋の歌。 種しあれば岩にも松は生ひにけり恋をし恋ひば逢はざらめやも これは古今和歌集の512番、読人しらずの恋の歌です。 現代語で大意を書くと次のようになります。 種があるので岩にも松は生えるのです。あなたを恋し続けたならば逢わないなんてことがあるでしょうか。いえ、そんなことはありません。 「恋し続けることで必ず逢える」という気持ちを詠んでいるものですね。古今和歌集が編まれたのは十世紀ですが、この歌のような気持ちは二十一世紀でもまったく色あせないのでは

下にのみ恋ふればくるし玉の緒の絶えてみだれむ人なとがめそ

#紀友則(きのとものり) #古今和歌集 #0667 #jtanka #短歌 #恋 心の中でだけあなたのことを慕っているのでくるしいのです。玉の緒が切れて乱れ散らばるように私もすっかり乱れてしまいましょう。世の人々よ、それをとがめてはいけません。 「下」はここでは「心の中」の意味。 「恋ふれば」は「恋ふれ+ば」。「恋ふれ」はハ行上二段活用動詞「恋ふ」の已然形。「ば」は順接の確定条件(原因・理由)を表す接続助詞。「恋しているので」の意味。 「玉の緒の」は「絶ゆ」の枕詞。

心をぞわりなきものと思ひぬる見るものからや恋しかるべき

#清原深養父 (きよはらのふかやぶ) #古今和歌集 0685 #jtanka #短歌 #恋 心は理屈に合わないものだとどうしても思ってしまいます。もしそうでなければ、あなたとこうして逢っているのに恋しいなんてことがあるでしょうか。いいえ、そんなことはないはずですから。 「わりなき」は形容詞「わりなし」の連体形。「理(ことわり)がない」ということから「道理に合わない」「どうしようもない」という意味。 「思ひぬる」は「思ひ+ぬる」。「思ひ」は四段動詞「思ふ」の連用形。「ぬる