結城浩 / Hiroshi Yuki
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最初はいっしょに(教えるときの心がけ)
「教えるときの心がけ」のコーナーです。ここでは教えるときのちょっとしたヒントをお話しします。
今日は「最初はいっしょに」というお話をします。
以下では便宜上「教師」と「生徒」という表現を使いますが、「教師」はあなた自身で、「生徒」はあなたが教える(指導する、しつける)相手だと思ってください。たとえば親が子に教えるなら教師は親、生徒は子にあたります。
結城浩のメールマガジン 2013年01月0
有明のつれなく見えし別れより暁(あかつき)ばかり憂きものは無し
壬生忠岑(みぶのただみね) 古今和歌集625 百人一首30 #jtanka
明け方にまだ残っている月が薄情なものに見えたあの別れの朝から、夜明け前の時分くらい気が滅入るものは無くなりました。
「有明」は「明け方になってもまだ空に残っている月」のこと。
「つれなく」はク活用の形容詞「つれなし」の連用形で「薄情である」という意味。
「見えし」は「見え+し」。「見え」はヤ行下二段活用動詞「見ゆ
物語とは何だろうか(本を書く心がけ)
ここ数年、結城は「数学ガール」シリーズという本を書いています。数学と物語を融合させたようなシリーズで、登場人物は本の中で数学をやると同時に、ふつうに物語も進めます。
結城は、このシリーズを執筆しているときには、「数学のこと」と「物語のこと」をずっと考えています。結城は文学者ではないので「物語論」というのはよくわからないのですが、素朴な疑問が継続的に心の中に浮かんできます。それは、
という疑問で
寄る辺なみ身をこそ遠くへだてつれ心は君が影となりにき
読人しらず 古今和歌集619 #jtanka
あなたのところには身を寄せる場所がありませんので、私の身はあなたから遠く離れています。けれども、私の心は影となってあなたのそばに寄り添ってしまったのです。
「寄る辺なみ」は「寄る辺+な+み」。「寄る辺」は名詞で「身を寄せる場所」の意味。「な」は形容詞「なし」の語幹で「ない」という意味。「み」は形容詞の語幹につく接尾語で「……なので」という意味。「